椎の木湖とともに   大山 修一
 

第十話 (最終話) 
明日に向かって、更なる心意気で!

1992年12月21日にオープンして以来、この21日で丸10年が過ぎ去る。早や11年を迎えることとなるわけだが、この10年は、私にとっては、全速力で駆け抜けたような感覚の月日であった。

”椎の木湖とともに”を第一話より読んでいただいている方々にはおわかりのことと思うが、私には資質・素質を含め何の前準備もなかったため、椎の木湖の経営は失敗と挫折の連続であり、反省ばかりが積み重なった。傍目からは、かなり気楽な商売をしているような風に見えたかも知れないが、実はかなり苦しかったというのが本音だ。どちらかと言うと鷹揚な性質だと思うが、その自分が神経性胃炎に悩まされることが多かったのだから、ご想像いただけることと思う。

しかし、一方では、私は非常に幸運であったと言える。多くの良き人々に支えられ、教えられて、現在のようにご愛顧をいただける椎の木湖を作り上げることができたのだから。実に多くの方々の智恵と温情が、私を助けてくださったのだ。今は、お客様一人一人が、私の社会へのアンテナであることに気づく。

何か障害にぶつかった時、解決の糸口を示唆してくださったのは、全て(ゴルフ練習場も含めた)会社のお客様であった。桟橋補修や屋根修理も、電気系統のトラブルと下水道・排水の不備の是正も、駐車場の整備も、樹木の手入れも、クラブハウスの内装も、空調も、そして専属の主治医までも、挙げたらきりが無いほど多くのことを、多種多様な分野を専門とするお客様が請け負ってくださった。その方々の迅速な対処が、現在の椎の木湖を作り上げてくれたに違いない。つくづく、私ほど客に恵まれた環境にいる経営者はいないと思う。

こうして現在の椎の木湖が存在するわけだが、これからはどうあるべきか? 池を見渡しながら、いつも私は考える。

社会の状況は刻一刻と変化し、科学技術は進歩していく。その進歩に呼応して、先端のものを取り入れていく進取の精神も必要であろうし、”温故知新”、昔ながらに大切なものも、決して忘れてはならない。このような心構えに至って、私の頭には、以下の三項目が浮かんでいる。

  1. アミューズメントプレイス(遊び場)として、更に快適な環境つくりに努めていくこと。もっと清潔で、きれいな場としたい。

  2. 更に楽しんでいただけるゲーム性に富んだ企画を考案していくこと。一人一人のお客様の楽しい思い出作りに貢献したい。

  3. どのような人々(年齢・身体状況・人種・性別などに関わり無く)にも公平で、差別のない娯楽の場となるよう尽力していくこと。子供や若い人ばかりではなく、色々な立場の人々にも、気軽に釣りを楽しんでいただいて、釣り仲間を増やす手助けをしていきたい。


これから15周年、さらに20周年へ向けての取り組みとして、掲げていきたいと思う。

また、”一日楽しく釣りをして、心地良く帰っていただく”こと。

これは、開業時から変わることの無い、私のお客様に対する究極の願いである。あらためて、この願いが、すべてのお客様に現実のものとなって届くように、益々頑張らなければならないと思う。

謙遜でも何でもなく、私には、頭も力も度胸も足りない。心意気だけが身上である。だから、更なる心意気の経営で、明日に向かって、一歩一歩歩みを進めて、”愛される椎の木湖”を築いていきたい!<完>

(メルマガ椎の木湖2002年12月号原文掲載)

椎の木湖文庫